公式LINEを追加し
豪華特典を受け取る!
お問い合わせ

近江神宮・網谷宮司が語る”時”への考えと時計文化

近江神宮

時計と祈りが出会う場所 〜時の聖地を訪ねて〜

当オンラインウォッチアカデミーは、機械式時計の魅力や文化を未来へ伝えることを目指して活動しています。その歩みの中で大切にしているのが、文化の原点に立ち返り、学びを深めていくことです。今回、その象徴的な場所である『時の記念日』の聖地、滋賀県の近江神宮を訪ねました。

近江神宮は約1360年前の第38代天智天皇を祭る神社です。

今回の記事では、近江神宮の宮司であり、時計学校の校長でもある網谷宮司にお話を伺いました。時計文化の継承や世界に向けたメッセージ、祈りと産業をつなぐ場としての神社の役割について、そして未来へ受け継ぐための想いを紐解いていきます。

(左)オンラインウォッチアカデミー藤本講師(右)近江神宮 網谷宮司

神社の役割と未来への使命

網谷宮司によれば、神社には大きく3つの役割があるそうです。1つ目は、人々が悩みや願いを神に伝え、心の平安を得るための祈りの場である宗教施設としての役割。2つ目は、御祭神の事績や神社の歴史・伝統・文化を正しく顕彰し、未来へ伝えていくこと。3つ目は、社殿や境内の樹木を含む鎮守の杜という古くからの日本文化を後世に残すために、日々整備・保存していくこと。

その役割の上で近江神宮は天智天皇の御事績を伝え、大津の地に創建された意義を次代へ伝えることを使命とされています。

清浄を守る日々の務め

神社では何よりも清浄が第一です」と語る宮司は、日々自ら本殿に上がって雑巾がけを行い、職員とともに境内を清掃されるそうで、祭祀においては、社殿を整え、清らかな状態で神事に臨むことが大切だと強調されます。

時計館・宝物館(外観):昭和38年に日本初の時計博物館として設立された時計館宝物館。1階には和時計や海外製の懐中時計、2階には宝物が展示されています。

日時計:境内に設置された日時計。太陽の影により時刻を読み取る伝統的な計時器のひとつとして、訪れる人々の目を惹きます。

古代火時計:火時計の復元模型。燃える香や糸の火によって時間を計測する仕組みで、境内に現存する貴重なアナログ式時計の一種です。

中今(なかいま) と時の哲学

天智天皇の後に即位した第41代文武天皇の宣命に現れる「中今」という言葉。これは、神道にとって大切な概念であり、2つの意味があるとのお話でした。

〔宣命:天皇の勅命を宣する文書(奈良時代に用いられた)〕

1つは「一瞬一瞬の時間は不可逆であり、今この瞬間を大切に生きていくこと」

もう1つは「私たちの存在は多数の先祖の命の流れと営みによって成り立ち、その流れを後世につないでいく責務があること」

また、天智天皇が漏刻(水時計)を設置して時を計り、鐘鼓を打って初めて時を知らせたという故事にちなみ、6月10日は「時の記念日」として定められました。近江神宮では現在もこの日を祝い、時の尊さを伝え続けています。

漏刻祭と時計奉納の意義

6月10日の漏刻祭では、国内外の時計業界の関係者が新作時計を奉納し、天智天皇の時報開始を讃えています。網谷宮司は、古代の漏刻(水時計)に由来する神事において現代の時計も奉納される特別さに触れ、この祭りならではの魅力についてお話しくださいました。

漏刻祭は他の神社には見られないユニークな神事であり、水時計の趣きと現代の時計の進化を一堂に感じることができます。日本文化の一つである百人一首競技かるたの聖地としても知られる近江神宮には多くの外国人観光客が訪れ、時計文化の発信地としての認知も一層高まっているそうです。

漏刻(水時計):天智天皇が造らせたと伝わる水時計“漏刻”をもとに再現されたもの。日本の“時の起源”を象徴する貴重な存在です。

神事 漏刻祭で奉納される舞楽の様子。

時計学校と自然の学び舎

近江神宮が運営する時計学校は1969年 (昭和44年) に開校し、半世紀以上の歴史を重ねています。網谷宮司は学校の校長も兼ねておられ、「機械式時計の技術教育と心のあり方には共通点がある」とのお話でした。

日本で一番大きな湖である琵琶湖に近い境内の豊かな自然の中で学ぶ環境はスイスの時計学校にも似ているのではといいます。学生は日本の伝統文化とともに時計技術を身に付け、卒業生は全国で活躍しています。親子二代で入学する例もあるそうです。歴史ある設備ゆえに、これからは新しい機器の導入も検討しており、さらに多くの学習者を迎えたいとの展望を示されました。

近江神宮付属近江時計眼鏡宝飾専門学校内

海外学習者へのメッセージ

近年は中国からの学生も学んでおり、外国の方にとっても貴重な学びの場であるようです。近江神宮は琵琶湖に程近く、自然と文化を体感しながら時計技術を習得できる環境です。

網谷宮司より、日本の伝統と技術に触れたい海外の時計愛好家に向けて、「ぜひ訪れていただきたい」と温かいメッセージがありました。

文化と産業を結ぶ祭神

天智天皇は石油産業に関わる燃水祭や百人一首競技かるた、時計文化など、多彩な産業振興の神として知られています。網谷宮司は、天智天皇のお名前である天命開別尊(あめみことひらかすわけのおおかみ) のように開運開拓の神である天智天皇のご利益をご紹介くださり、多くの参拝者が文化と産業の発展を祈る姿に接して感謝の意を述べておられます。

近江神宮は、祈りの場であると同時に、時計文化や産業の未来を切り開いていく拠点として、これからも世界に向けて大切な役割を担っていくことを期待されています。

近江神宮 境内

あわせて読みたい

関連リンク

本記事でご紹介した近江神宮や時計学校について、詳しくは以下をご覧いただきたい。

※本記事はオンラインウォッチアカデミー(OWA)が、時計文化の魅力を未来へ伝える活動の一環として取材・制作しました。