時計にまつわる資格を”3つ”を時計修理のプロが徹底解説

「時計の資格を取りたいけど自分はどれが合ってるんだろう?」
「時計の資格ってそもそもどれぐらいあるの?」
と思い、この記事を開いたあなた、こんにちは。
時計修理歴約30年、600人以上に技術を伝えてきた藤本です。
まず、資格についてでは、時計修理技能検定、ウオッチコーディネーターは現在(2025年12月時点)もチャレンジすることが可能です。
ですが、CMWという日本時計師会が主宰している資格試験は2024年から受験することができなくなっています。
本記事では、時計修理技能士として現場経験のある立場から、
・それぞれの時計の資格について
・あなたがどの資格をとるべきなのか
・取得した際のメリット
この記事を最後まで読むことで、現在受験できない資格などにも触れ、あなたに合っている時計の資格を見つけることができます。
目次
時計に関する資格は3つある

時計修理技能検定、CMW、ウオッチコーディネーターの3つが時計関連の取得できる資格です。
この3つの資格は方向性も全く異なるため、目的に合わせて取得することでキャリアアップなどに活かすことができます。
時計修理技能検定(国家資格)
私も以前検定員としてお手伝いの経験があるこちらの試験、中央職業能力開発協会(https://www.javada.or.jp/index.html)が行っている制度です。
また、こちらの検定は3級から1級までとなっており、それぞれ難易度も異なります。詳しくはこちらの関連記事をご確認ください。
主に時計関係の業務に携わる方が自己のキャリアアップや職場での目標達成の為に取得するケースが多いです。
また、受検資格は下記に定められているため、一度目を通した上で、受検してください。
原則として検定職種についての実務経験が必要ですが、その期間は、学歴や職業訓練歴等により異なります。また、一定の資格や能力をもつ方については、学科または実技試験が免除される場合もあります。
実務経験のみでの受検資格に関しては、下記のとおりです。
一級:7年以上
二級:2年以上
三級:検定職種に関し、実務経験を有するもの
引用元:東京都はたらくネット
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/monodukuri/sikaku/kentei/apply.html
CMW(公認上級時計師)
CMWは日本時計師会が行っている公認上級時計師 Certified Master Watchmakerの略称で、時計職人の最高峰の試験です。
一時中止されていましたが近年再開され、近江時計眼鏡宝飾専門学校内で実施されていましたが、2024年から試験を行っておらず、今後の見通しは現状ではお伝えできません。
試験内容について1954~1980年頃まで開催されていた項目を公式サイトから引用します。
一次試験:学科試験250問題、また、時計旋盤による天真別作,巻真別作が出題されました。
二次試験:懐中時計の天真別作、ドテピン別作、ヒゲ棒別作等、故意に大きく壊されている懐中時計のオーバーホールと修理及びクロノメーター級の精度を求める高度な時計修理技術試験でした。
そして、さらに国産腕時計が故意に壊されていて修理・オーバーホール及び精度調整を求めるものでした。
引用元:CMWとは
https://ntokeishikai-cmw.jimdofree.com/cmw%E3%81%A8%E3%81%AF/
難易度の高い試験だということがお分かりいただけたと思います。今後、また日本時計師会で動きがあり次第、記事を作成しようと思います。
CWC(ウオッチコーディネーター)
一般社団法人である日本時計輸入協会が運営しているウオッチコーディネーターは、時計を販売する際に活かすことができる専門知識、適切な接客ができるようになることを目的とした検定です。
2011年からこの検定は行われており、現在では約3,000名以上の方が取得しているものです。
CWCは取得後に、会員になることで会員同士の交流や講習会への参加、求人情報の公開など得ることができるメリットが多いです。
そのため、もし時計業界でのキャリアアップなどを考えているのであればCWCを取得し、セミナーや求人を見て、申し込むのも1つの手段です。
この検定はウオッチコーディネーター、上級ウオッチコーディネーターが存在し、上級ウオッチコーディネーターは基礎的な内容を網羅したウオッチコーディネーターを取得したうえで検定を受けることが可能になります。
詳しくはこちらをご覧ください。
それぞれの受験方法

今回取り上げた3つの時計にまつわる資格の受験方法についてお伝えしていきます。
時計修理技能士:年1回
年に1度だけ、受検することができます。申し込みの期間は10月上旬から中旬とかなりタイトな日程になっているため要注意です。
また、全国どこでも受けることができるわけではありません。なので、事前に自分の県で受けることができるのか事前にご確認くださいね。
(例)東京都で申し込む場合
「東京都 技能検定」で検索
→東京都職業能力開発協会の公式HPに飛ぶ
→技能検定のページをクリック
技能検定(定期試験)受検申請の流れ | 東京都職業能力開発協会
→受検案内・申請書の配布及び受付先を確認
→申請書送付依頼フォームから申請書を入手or職業能力開発施設にあらかじめ電話を行い、現地で受け取り
→その後申し込み
という流れで進めていきます。
CMW:募集停止
現在は募集を停止してしまっていますが、以前であれば近江時計眼鏡宝飾専門学校で2月中旬に試験を実施していました。
受験の申し込みは受験申込書と現金を同封させ、送付するか、指定口座に振込むことで行うことができます。
ウオッチコーディネーター:年1回
11月に申込募集を行い、翌年1月に受験することができます。期間は1ヶ月あるので時計修理技能士のように申し込み忘れなどは起こりにくいですが、それでもスケジュール帳に記載するなど対策は行っておきましょう。
ウオッチコーディネーターは個人受験、グループ受験があるのですが、今回は個人受験のみを取り上げます。
ウェブから申込
→汎用(郵便局備え付け)の払込取扱表での受験料の払込み
→受験票の受け取り
という流れで進めていきます。また、こちらは全国で受験できるわけではなく、東京と大阪のみで受験できるため、その点もご注意ください。
また、上級の場合は筆記試験のみで実技はありません。
どの資格を取るべき?目的別の選び方

時計修理技能検定、ウオッチコーディネーターの違いが明確になったと思います。ここでは資格を取得する目的を取り上げ、どちらを選んだ方が良いのか、お伝えしていきます。
手に職をつけたいのであれば時計修理技能検定
時計修理技能検定は、時計にまつわる資格の中で唯一の国家資格であり、実際に時計を分解・組立・調整できる“技術職”としての専門性を示す資格です。
・時計修理の本格的な仕事に就きたい
・スキルとして残る資格が欲しい
・副業として分解掃除や修理を請けたい
・時計の構造に詳しくなりたい
上記のような気持ちがあるのであれば、こちらの検定を受けることを検討してみてください。
販売店でキャリアアップしたいのであればウオッチコーディネーター
ウオッチコーディネーターは、時計販売や接客の質を高めるための民間資格です。また時計が趣味の方の知識欲を満たしてくれるような内容でもあります。
・接客の説得力を高めたい
・店舗内での評価を上げたい
・管理職・店長候補として武器がほしい
・ブランド時計の基礎知識を体系的に学びたい
・時計全般に興味があれば高得点で合格という目標も
技術という側面よりも、販売力や専門知識の証明になる資格となっているため、すでに販売店に勤務している方にとっては非常に有効な資格だと思っています。
時計修理技能検定の取得を考えている場合、私たちオンラインウォッチアカデミーでも試験の対策が行えるため、ぜひご検討ください。
年間の募集要項はこちら
https://online-watch-academy.com/ondemand_requirements/
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事はオンラインウォッチアカデミーの講師である藤本が監修しています。
藤本信和
一級時計修理技能士。1973年東京都生まれ。
大学にて家具デザインを専攻、卒業後ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
ウォッチメーカーコースに通い、時計修理の世界へ。
時計店ではあらゆる修理・受付販売などに携わり、
その後東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジにて講師として10年間で、
学生とキャリアスクールの社会人約600人に教える。
21年4月より東京都千代田区飯田橋に自身の工房、Foliot(https://foliot.co.jp/)を構える。
好きな時計はROLEX。趣味はカーレース(軽自動車の耐久レース)