腕時計は自分で修理できる?種類別の手順と失敗しないコツを解説

「時計修理に興味があるけど自分でもできるのかな…」
結論からいうと、腕時計を自分で修理することは可能です。ただし、腕時計の修理といっても、作業によって難易度も大きく異なります。
比較的取り組みやすい作業がある一方で、正しい知識や工具の扱い方を知らないまま作業すると、かえって時計を故障させてしまう可能性も。
そこで本記事では、構造の話からクォーツ時計・手巻き時計・自動巻き時計の種類別に、自分で修理する場合の方法まで徹底解説をしていきます。
Table of Contents
自分で時計修理を行うことは可能
腕時計は精密機器ですが、正しい知識と技術を身につければ修理を行うことは可能です。
実際に時計修理を仕事としている時計修理技能士も、作業を1つずつ行いながら時計を修理しています。
知識や経験がなくても簡単に修理できるわけではありません。そのため、まずは腕時計の修理がどのように行われているのかを理解しておきましょう。
時計修理の基本的な流れ

腕時計の内部に問題がある場合、一般的には時計を開けて内部の状態を確認し、必要に応じてムーブメントを分解して修理します。
メーカーが行う分解掃除でも状態確認から始まり、下記の工程が行われています。
・ムーブメントの分解
・部品の洗浄
・劣化部品の交換、修正
・組み立て
・注油
・精度調整
・ケーシング
・最終点検
一点注意が必要なのが、すべての故障で分解掃除が必要なわけではありません。
裏蓋を開けて内部を確認
1点、注意が必要で裏蓋はすべて同じ方法で開くわけではありません。
時計によって裏蓋の開け方が違うので、適した工具や方法で開ける必要があります。
また、とりあえず中を見てみようと不用意に裏蓋を開けると、埃や異物が入り込んだり、防水性に関わるパッキンを傷めたりする可能性もあるので注意してくださいね。
ムーブメントを取り出して分解
内部の修理が必要な場合は、ムーブメントを取り出し部品を分解していきます。
「なんでひとつひとつ分解する必要があるの?」と思う方もいるかもしれません。
これは洗浄を行うために必要な工程。そして、分解するとお伝えしましたが、ムーブメントによって分解方法も力加減も変わってくる。
正直、挫折する人が多い工程です。
分解した部品を洗浄

洗浄が必要な理由としては、内の潤滑油が劣化していたり、細かい汚れが発生しているからです。
ここで重要なのは、ただ部品をきれいにすれば修理が完了するわけではないという点。汚れを落としたらそこに傷や変形が起きているかもしれませんよね。なので、しっかりと破損がないかを判断します。
ですが、ここまで記事を読んでいる初心者のほとんどは「難しすぎる…」と思うかもしれません。それは当たり前です。部品の曲がっていない状態を知らないと曲がっていることには気づけない。
本記事では、分解掃除以外で修理する方法もお伝えするので最後まで見てくださいね。
必要な箇所に注油
部品を洗浄したあとは、必要な箇所に新しい油を注油します。
機械式時計の内部では、部品が常に動いている。なので適切に油がさされていないと摩擦が増えて部品が削れたり、故障する原因になります。
ここも難しいところで、時計修理における注油は、どこでも油を差していいというものではありません。
・どこに
・どの種類の油を
・どの程度使用するのか
ただ、こうした作業も正しい方法で繰り返し練習することで少しずつ身につけることができます。これについては後ほど詳しく解説します。
ムーブメントの組み立て
ただ元の場所に部品を戻せばよいわけではありません。
部品同士が正しくかみ合っているか、歯車が正常に動いているかなどを確認しながら作業する必要があります。
この後に動作確認などもありますが、本記事では省略します。
どうでしょうか、これが時計を自分で修理するときの基本的な考え方です。
ただし、先ほど説明したように全ての時計でここまでの作業が必要になるわけではありません。

修理したい腕時計の種類別に方法を解説
今回は代表的な「クォーツ時計」「手巻き時計」「自動巻き時計」の3種類について解説します。
クォーツ時計

電池を使用して動かしている時計。
時計が止まった原因が単純な電池切れであれば、電池交換によって再び動き出す可能性があります。
そのため3種類の中では、電池交換は取り組みやすい作業といえます。基本的には裏蓋を開けて電池を確認し、適合する新しい電池へ交換、これだけです。
ただし、裏蓋の開け方は時計によって異なりますし、埃が入らないように注意が必要。個人的には電池交換であればYouTubeの参考動画を見て取り組んでいる方も多いイメージです。
厄介なのが、電池交換をしても動かない場合。これはなぜかというとクォーツ時計にも油が入っているので油の劣化、部品の摩耗、モーターの不具合が挙げられます。
そうなってくると自分で修理するハードルは3段階ぐらい上がるイメージです。
手巻き時計

いわゆる機械式時計、手で巻いて中の部品を動かす仕組みです。
クォーツとは異なり、全て部品で構成されているので自分で行える領域はバンド交換であったり、外側の掃除ぐらいです。
なぜかと言うと、裏蓋を開けて、分解して〜だったりの作業はまずは壊れていない状態を学んでいないと行えないから。正確に言うと、作業を行うことは可能かもしれませんが99%故障させる結果になるでしょう。
そして、こう思う方もいるかもしれません。「修理動画をみてやればいいんじゃないの?」と。
ですが、部品の状態が正常なのか、どこが故障の原因なのかなど…判断するには知識と経験が必要です。修理する際は、最初から大切な時計を使うのではなく、段階的に学びながら技術を身につけましょう。
自動巻き時計

自動巻き時計も、手巻き時計と同じ機械式時計の一種。違いは、腕の動きを利用してぜんまいを巻き上げる自動巻き機構を備えていること。
基本的な時計修理の考え方は手巻き時計と同じですが、手巻き+自動巻きの機構も加わります。
故障の原因によってはムーブメントを分解し、洗浄だったりを行わなければなりません。
なので、こちらも知識がない状態でいきなり自分の時計を分解して修理することはおすすめできません。

時計修理でよくある勘違い
「悪いところだけ少し直せば動くんじゃ?」など時計修理の初心者の方がしているよくある勘違いを紹介します。
油を差せば時計は直る?
「動きが悪いなら油を少し差せばいい」と考える方もいるでしょう。
ですが、よく考えてください。古い油と新しく入れる油が混ざった状態って危険だと思いませんか?そしてその油は同じものですか?
また、動きが悪いのは油のせいではない可能性も十分にありえる。
内部に汚れがあったり、すでに部品が摩耗していたりする場合、逆効果になります。
部品を洗浄すれば時計は直る?
「汚れている部品だけきれいにすればよい」と思うかもしれません。ですが洗浄は時計修理の1工程。
洗浄したあとに部品の摩耗の確認を行い、最後に精度を調整するところまで含めて修理が行われます。なので洗浄をしたからといって、直るわけではないんです。
壊れている部分だけ交換すれば直る?
明らかに壊れている部品が見つかった場合でも、壊れた原因が別にある可能性があります。
症状だけを見るのではなく、部品全体の状態から原因を探すため、単純な部品交換だけで終わらないケースもあります。
独学は難易度が高く故障のリスクが大きい

YouTubeなどで時計の分解方法や修理方法を調べられますよね。なので、動画を見てやれば独学でも修理できそう…と思うのも自然なことです。
ただ、時計修理を完全に独学で習得しようとすると大きな問題がある。それは、自分の作業が正しいのかを自分だけでは判断しにくいことです。
動画と同じ順番で部品を取り外せたとしても、
注油した油の量は正しいのか
・部品は正常なのか、それとも摩耗しているのか
・組み立てた時計の精度は問題ないのか
こうした部分は、単純に手順を覚えるだけでは判断できません。
そして、このような場合はケースバイケースかつ、職人の高齢化が起きているためノウハウがweb上に全く載っていません。
思い入れのある時計を練習なしで分解するのは避け、正しい方法を知り、練習を重ねてから実際の修理へ進むことが重要です。
学校に行かなくても修理ができるようになる理由
ここまで読んで、
「やっぱり時計修理は手先が器用な人にしかできないじゃん」
と思った方もいるかもしれません。確かに、時計修理では非常に小さな部品を扱います。
ですが重要なのは、正しい工具の使い方を知り、それを何度も繰り返して手を慣らしていくことです。初めて時計を分解するときは、部品をつかむだけでも難しく感じるかもしれません。
それでも同じ作業を繰り返していくうちに、少しずつ身についていきます。
これはどんなことでも共通ですよね、箸を最初からうまく持てる人は少数です。何度も繰り返すことで意識せずできるようになる。なので、最初から諦めるのではなく、実際に時計を触りながら経験を積むことが最も重要です。
視力に関して心配な方はこちらの個別相談で私、藤本に相談してください。
時計修理をより手軽で確実に学ぶなら
時計修理を習得するには、分解する方法だけではなく、時計の構造、工具の扱い方、部品の洗浄、注油、組み立て、調整まで1つずつ学んでいくことが重要。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
この記事はオンラインウォッチアカデミーの講師である藤本が監修しています。
藤本信和
一級時計修理技能士。1973年東京都生まれ。
大学にて家具デザインを専攻、卒業後ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
ウォッチメーカーコースに通い、時計修理の世界へ。
時計店ではあらゆる修理・受付販売などに携わり、
その後東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジにて講師として10年間で、
学生とキャリアスクールの社会人約600人に教える。
21年4月より東京都千代田区飯田橋に自身の工房、Foliotを構える。
好きな時計はROLEX。趣味はカーレース(軽自動車の耐久レース)


