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時計修理技能士は独学で目指せる?つまずきやすいポイントを解説

時計のムーブメント

「時計修理技能士って独学でなれるの?」
「時計修理の資格ってそもそも難しいの?」

このような疑問をもち、この記事を開いたあなた、こんにちは。
時計修理歴約30年、600人以上に技術を伝えてきた藤本です。

結論から言うと、3級・2級は独学で合格可能。ただし2級から一気に難易度が上がり、1級は独学ではかなり難しいと言えます

本記事では、時計修理技能士として現場経験のある立場から、

・練習ステップ

・つまずきやすいポイント

・独学とスクールの違い

を体系的に解説します。この記事を読めば、あなたが独学で進むべきか、講座の方が早いのかが明確になります。

【結論】時計修理技能士は独学で合格できる

厳密にいうと「時計修理技能士」ではなく、「時計修理技能検定」という資格を取得することになります。

中央職業能力開発協会に記載されている情報も併せてご確認ください。

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この資格は3級から1級まで存在しているのですが、それぞれ受検できる条件や試験内容も異なるため、本記事ではそれら全ての内容について触れていきたいと思います。

独学で取得しやすいのは3級・2級(難易度の違いを解説)

まずは東京都の合格率をご覧ください。この数値は中央職業能力開発協会(https://www.javada.or.jp/)に問い合わせて取得した確かな数値です。

1級30%
2級55%
3級69%

3級は受検しやすく、また内容も独学で練習すれば取得可能な内容になっています。

1級に関しては7年以上時計修理を行っている人が受検しても30%という点で、難易度が高いことがお分かりになると思います。ですが、3級は50%以上と比較的合格率は高く、受検資格のハードルも低いため、3級からチャレンジしてみても良いかもしれません。

ただし腕に覚えがあって経験年数が豊富、作業に慣れていたら2級から挑戦するという方法もあります。

また、3級は主に販売店さんに勤めている方が取得する場合が多く、梱包などの作業が試験内容に含まれます。2級からは時計修理の実技がメインになってくるという違いもあります。

まず受検資格をチェック

受験

受検資格がなければそもそも申し込みをすることができないため、全ての級の受検資格、試験内容をご覧ください。

受検に際しては、原則として検定職種に関する実務経験が必要です。

必要とされる実務経験の年数は以下のとおりですが、職業訓練歴、学歴等により短縮される場合があります。詳しくは厚生労働省のホームページをご確認いただくか、最寄りの都道府県職業能力開発協会へお問い合わせください。

1級7年以上
2級2年以上
3級

3級の受検資格として必要な実務経験期間については、従来は6ヵ月以上とされておりましたが、平成25年4月から緩和され、6ヵ月に満たない場合も受検可能となりました。


また、検定職種に関する学科に在学する方及び検定職種に関する訓練科において職業訓練を受けている方も受検できます。

https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/giken.html#Anchor1

中央職業能力開発協会から引用

受検できるのは年1回のみ

時計を修理している様子

時計修理技能検定は年に1度、受検することができます。申し込みの日程は10月上旬から中旬と期間が短いため、申し込み忘れなどのミスに注意が必要です。

時計修理技能士の検定を実施している都道府県は全国どこでもというわけではなく、限られており、年度や級によっても異なるので事前にお住まい又は勤務地で受けられるのか事前の調査が必須です。

令和7年度の時計修理1、2級の例で挙げると以下の通りです。

北海道、岩手県、秋田県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、石川県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県、滋賀県、大阪府、和歌山県、広島県、徳島県、香川県、高知県、福岡県、鹿児島県

令和7年度(後期)実施公示一覧
https://www.javada.or.jp/jigyou/gino/pdf/R07kouki_kouji.pdf

各都道府県のHPにて技能検定の受検について告知をしているので、ぜひ前もってご確認ください。
ちなみに東京都の場合は、このような手順で申し込みを行います。

「東京都 技能検定」で検索

→東京都職業能力開発協会の公式HPに飛ぶ

→技能検定のページをクリック

→受検案内・申請書の配布及び受付先を確認

→申請書送付依頼フォームから申請書を入手or職業能力開発施設にあらかじめ電話を行い、現地で受け取り

→その後申し込み

独学が難しくなるラインはどこ?

多くの方が独学で進めるうえで難しくなる箇所としては、正確な作業と決められた時間内に要求項目を完了させるスピードに尽きます。

特に新品時計を用いるのが技能検定なので、いかに傷をつけず、要領よくスピーディに完了させるかで合格の確率は変わってきます。事前にどれだけ準備できるか、またポイントを押さえた段取りを身につけたいです。

具体的に挙げると2級のアナログクォーツもかなりの回数の反復練習をこなして、余裕を持った能力をつけないと本番で困る事態になりかねません。

独学で時計修理を学ぶ方法

独学で資格を取得することは難易度が跳ね上がりますが、実際にOWAでは2級までを独学で取得した方もいらっしゃいます。

そんな会員さんにインタビューを行ったYouTube動画をぜひご視聴ください。

(28:40から該当の会員さんにインタビューを行っています。)

具体的な方法をこれからご紹介しますね。

基本の学習ステップ

学習方法としては級にもよりますが、基本的にオーバーホールの練習を繰り返し行うことが合格への近道です。

学習ステップでいうと3級の場合は、梱包、測定、バンドの駒調整が作業内容になりますが、むやみやたらに取り組んでもきれいで確実な作業にはならないので、やるべき項目、注意点、時間配分、計算方法を把握したうえで反復練習をこなしましょう。

2級の場合、例年ですとクォーツ時計の分解掃除と巻真交換が含まれています。毎年検定の内容が微妙に変更されるので配布される試験問題をしつこく読み込んで、入念に繰り返し練習を重ねたいです。

1級の場合、クォーツに加えて機械式時計の分解掃除が含まれます。なおかつ作業できる時間にかなり制約があります。精度調整も含めて速やかで確実にこなさないと合格は望めないでしょう。

独学に使える参考書・教材

結論からお伝えすると数年に一度、試験内容が変わるため、使える参考書などはありません。そのため、過去に受検をした動画であったり、過去問を確認して対策するのが最善の方法です。

藤原時計店さんの時計修理学科試験問題集が購入可能なため、独学で学ぶ方はぜひ購入を検討してみてくださいね。

http://fujihara-tokei.com/

SNSや動画学習はアリ?

動画で時計修理の学習を進めるのは非常に有効的です。

私が運営しているオンラインウォッチアカデミーでも「オンラインでプロから学べる」ということを強みにしており、より分かりやすい解説を心がけています。

ですが時計修理を始めて間もない方は、ムーブメントの違いや対策する箇所、傾向などを知る術がないため、YouTubeなどで対策動画を見つけてください。

オンラインウォッチアカデミーのYouTubeチャンネルでも3級の対策動画(簡易版)を公開しています。

【時計修理技能検定】技能検定3級で出題された作業をデモンストレーション!【前編】|オンラインウォッチアカデミー
【時計修理技能検定】技能検定3級で出題された作業をデモンストレーション!【後編】|オンラインウォッチアカデミー

練習ムーブメントの選び方

時計修理を教えている私がオススメする練習用のムーブメントをご紹介します。実際にオンラインウォッチアカデミーでも課題時計に取り入れているものなので安心してご購入ください。

手巻き時計(ST36または9011)
(ETA6497の廉価版)
機械式時計の入門編として練習に適しています。

手巻き時計(ST36)

自動巻き時計(シチズン8200)
技能検定1級でここ数年採用

自動巻き時計(シチズン8200)

クォーツ時計(シチズン1112)
技能検定1,2,3級対策用

クォーツ時計(シチズン1112)

時計に関してはインターネットの通販でも各種購入が可能です。また工具に関しては我々と提携している株式会社三宝(https://www.sanpou-tokei.jp/)で販売しているのでぜひご確認ください。

独学にかかる費用と期間の目安

独学はあくまで自分で判断して進めたり準備するので費用は格安で、受験をするだけなら期間も限りなく短くて済みます。ただし、合格できる確率は当然低いです。

体感、何度受けても落ち続ける人は珍しくなく、何年費やして不合格という可能性もあります。

もちろん中には周囲が驚くぐらい器用で要領のいい方は奇跡的に受かる方もいますが、基本的には独学での合格は難しいと思っていただいた方が賢明です

最低限必要な工具の費用

洗浄をしている様子

オンラインウォッチアカデミーの例でお伝えすると、28個の工具の購入をオススメしています。工具の種類一覧をお伝えしますね。

1ドライバー
2ピンセット
3ブロア
4伏せ瓶
5作業マット
6眼鏡拭き
7インディア
8キズミ
9キズミホルダー
10剣入れ
11筒かな抜き
12機械台
13オイルカップ
14オイラー
15ケーシングクッション
16ベンジン
17指サック
18洗いバケ
19ロディコ
20サグリ棒
21グリス
22オイル爪石・ホゾ
23中間グリス
24オープナー
25保持器
26万能機械台
27ベンジンカップ
28剣抜き

実際には電池電圧を測定するテスターや作業台、照明など作業に応じて別途必要な工具はあります。

ですが、アカデミーでは基本的な工具類を上記のように1セットにまとめており、会員様向けに8万円前後で三宝さんより販売しています。

もちろん、もっと安価に入手できる場所もありますが、一定の工具の質がないとムーブメントを傷つけてしまう恐れがあるため、こちらでご案内しております。

ですが、まずはチャレンジしてみたい!という方はAmazonなどで調べ、上記の工具の購入を検討してください。格安工具であれば上記の半分以下の値段で購入することができると思います。

練習用ムーブメントの費用

練習に使用するムーブメントのため、基本的に中国製や国産廉価品のムーブメントを推奨しています。現在では質も高く、値段も他と比べると安価なため、気兼ねなく練習に使えます。

費用は受検したい級にもよりますが、ざっくりとした計算だと

機械式手巻き ST36(CHINA 6497改) ¥16,500

機械式自動巻き NH36(セイコー系) ¥17,600

国産クォーツSEIKO 7N43 ¥16,500

=¥50,600

最高でもこのぐらいの費用になります。もちろん、セイコー7S26などを積んでいる時計をすでにお持ちの場合は、その時計を練習で使用しても大丈夫です。

独学でつまずきやすいポイントと注意点

ムーブメントを触っている様子

2級以上だと注油の際の油の量や時間配分、巻真交換に苦労するケースが多いです。

ですので反復練習ももちろん重要ですが、適性な油量の目安についてアドバイスをもらったり、実際の作業を見てもらうことでかなり合格への近道になるはずです。

よくある失敗

やはり時間配分に尽きます。これはどの級でも言えるのですが、限られた時間内に正確に作業しようと思うあまり、いつも以上に時間が経ってしまい、最後時間切れになったという経験談は良く聞きます。

それぞれの級の壁

1級機械式時計の分解掃除は精度調整も含まれるのできれいで速やかな作業を両立させるのは難しい部類に入ります。修理のベテランで毎日仕事で携わる人なら特に難しい内容ではないですが、時間も限られているので相当訓練を積んだうえでチャレンジしたいです。
2級例えば巻真交換だと課題時計は工場で生産されたまっさらな時計です。
基本的にすべてのネジ、部品がきっちりと組み込まれているのでリューズと巻真の接着も例外ではないです。慣れない人にとってはあまりにも固いネジ込みに苦労した結果折ってしまうなんてことは珍しくないです。
3級測定を普段と違う環境で取り組む必要があるので戸惑ったり、バンドの駒調整も傷をいかにつけずに早く終わらせるかという作業が必要になるため、意外に難易度が高いです。

独学が難しい場合の学び方

独学で時計修理技能士になることは可能、でもその道はかなり険しいです。身の回りで時計修理を教えてくれる人がいない場合は、どのようにして練習をすればいいのかも不明瞭。

なので、独学で挫折する前、もしくは挫折してしまった方は学校などで時計修理を学ぶことをオススメしています。

もちろん費用などはかかってしまいますが、より時間を有効的に使うことができます。

講座・スクールで学ぶ場合の費用

藤本講師が修理している様子

現在、日本で展開されている講座、スクールをご紹介します。

ヒコ・みづのジュエリーカレッジ(東京校/大阪校)

私もここで時計修理を学び、また、講師として10年間教えてきました。

3年制ウォッチメーカーマスターコース

本校は一般社団法人 日本時計輸入協会からのウォッチメーカー育成依頼により開設された業界認定校です。入学する方は全員未経験からのスタート。本場スイス式の技術トレーニングを採用し、質の高い授業を行なっています。

引用:ヒコ・みづのジュエリーカレッジ公式サイトウォッチメーカーマスターコース(https://www.hikohiko.jp/watch)

費用はこちらのページからご確認ください。

募集要項・学費
https://www.hikohiko.jp/quickcode/hiko/themes/tokyo/pdf/2026_tokyo_03.pdf

キャリアスクールウォッチメーカーコース

機械式時計の分解・組立・注油・精度調整や、クォーツ時計のオーバーホール・電池交換等の基礎的な修理技術を学びます。授業は19時スタートなので、お仕事や学校帰りの通学が可能です。

引用:ヒコ・みづのジュエリーカレッジ公式サイトキャリアスクールウォッチメーカーコース(https://www.watch-hiko.jp/career_college/

費用などはこちらからご確認ください。
https://www.watch-hiko.jp/career_college/

近江時計眼鏡宝飾専門学校(滋賀県)

近江神宮内にある由緒正しい場所で時計修理を学ぶことができます。オンラインウォッチアカデミーで取材させていただいた記事も合わせてご確認ください。

近江時計眼鏡宝飾専門学校時計科(3年制)
近江時計眼鏡宝飾専門学校時計宝飾科(3年制)

費用はこちらのページからご確認ください。

募集要項・学費
http://www.tokei-co.org/page3

OnlineWatchAcademy(通信教育)

時計技術を持つ人とその知識を学びたい人が集い、700年に渡る人類の知恵と技の歴史を継承する場。

ウォッチリペア基礎コース298,000円(入会費・コース費含む)

継続して2年目、3年目のカリキュラムも存在しますが、継続の有無は都度選択可能です。

募集要項・学費
https://online-watch-academy.com/ondemand_requirements/
(常時入会可能)

どんな人に向いている?

時計修理を学ぶ際の選択肢

本業にしたい、短い時間でしっかりと学んで時計修理技術を身に付けたいという方は実際に学校に通い技術を習得することをオススメしています。

ですが、働いていて通う時間もない、スキマ時間に時計修理を学び、長期的に時計修理を学んでいきたいという方にはオンラインで時計修理を学ぶことができるオンラインウォッチアカデミーがオススメです。

今回ご紹介した学校などでもし、「私はこれが合ってるな…」と感じた場合、ぜひお問い合わせをしてみてくださいね。

それぞれ体験授業や説明会、オープンキャンパスを実施しています。

なぜ独学より効率が良いのか

先ほどもお伝えした通り、時計修理を学ぶ場合は手順であったり、コツを知らなくては進むことができません

もし、身の回りで相談できる人がいる場合は問題はないと思いますが、1人で、更に独学で取り組む場合、人にもよりますが学校の5倍、10倍の時間を要することが容易に想像できます。

また、工具に対する力の加え方など先輩技術者が実際にレクチャーしないと掴むことができない”感覚的な作業”も存在します。

なので独学で時計修理技能士になることは不可能ではありませんが、挫折してしまう人が大半のため、私は学校、もしくはオンラインなどのスクールで学ぶことをオススメします。

自分のペースで時計修理を学びたい方はこちらから

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この記事はオンラインウォッチアカデミーの講師である藤本が監修しています。

藤本信和

一級時計修理技能士。1973年東京都生まれ。
大学にて家具デザインを専攻、卒業後ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
ウォッチメーカーコースに通い、時計修理の世界へ。

時計店ではあらゆる修理・受付販売などに携わり、
その後東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジにて講師として10年間で、
学生とキャリアスクールの社会人約600人に教える。

21年4月より東京都千代田区飯田橋に自身の工房、Foliot(https://foliot.co.jp/)を構える。
好きな時計はROLEX。趣味はカーレース(軽自動車の耐久レース)