Contact Us

プロが腕時計のサイズ・長さ調整(コマ詰め)を「格安工具」でやってみた

YouTube動画のサムネイル(コマ調整)

「時計のコマ調整って自分でできるの?」
「100均や格安工具でもサイズ調整は可能なの?」


このような疑問をもち、この記事を開いたあなた、こんにちは。
時計修理歴約30年、600人以上に技術を伝えてきた藤本です。

結論からお伝えすると、時計のコマ調整は“バンドの構造”“工具の扱い方”を正しく理解すれば、セルフでできる場合もあります。

ただし、無理をすると時計や工具を傷めてしまうため、「引き際」が非常に重要です。

本記事では、YouTubeで公開している「プロが格安工具を使って実際にコマ調整を行った検証動画」をもとに、

・時計のコマ調整の基本

・3種類のバンド構造ごとの調整方法

・セルフでやっていいケース、やめた方がいいケース

これらを実演ベースで詳しく解説します。この記事を読めば、「自分の時計はセルフ調整できるのか?」を判断できるようになります。

実際の作業の様子や力加減を確認したい方は、記事元となった動画もあわせてご覧ください。

時計のコマ調整とは?サイズ調整の基本

時計のバンド

時計のコマ調整=腕時計のサイズ調整・長さ調節

時計のコマ調整とは、金属バンドの「コマ」を外す、または詰めることで、腕時計のサイズ(長さ)を手首に合わせる作業のことです。

「時計のサイズ調整」「腕時計のサイズ直し」「コマ詰め」など、呼び方は違っても意味はすべて同じです。

ネットで購入したり譲り受けたりした時計を快適に使うためには、避けて通れない作業です。

セルフで時計のコマ調整はできる?

結論:できる場合と、やめた方がいい場合がある

今回の検証では、あえて「中国製の格安工具」「100均グッズ」を使用しましたが、結論としてバンド調整は可能でした。

しかし、セルフ調整が可能かどうかは、以下で決まります。

・バンドの構造を正しく理解しているか

・時計をしっかり固定できるか

・工具が滑らず、力を正しくかけられるか

特に「固定」は工具選び以上に重要と言っても過言ではありません。

プロは専用の万力を使いますが、手で不安定に持って作業するのは、ドライバーが滑って時計や指を傷つけるため非常に危険です。

逆に「少しでも違和感がある」「力を入れても動かない」この場合は即撤退が正解です。

ネジ式バンドのコマ調整方法と注意点

ネジ式バンドの見分け方

ネジ式の見分け方

バンドの側面を見ると、マイナスの溝がある「ネジの頭」が確認できるのがネジ式バンドです。反対側はフラットになっています。

ロレックスなど、高級時計に多く採用されているタイプです。

ネジ式コマ調整の手順

バンドをしっかり固定する
専用の台座や万力で時計が動かないようにします。

固定させている図

ドライバーを強く押し当てながら回す
ここが最大のコツです。「下に押す力が7割、回す力が3割」のイメージで回します。

ドライバーを押し当てている図

最後まで緩めたらピンセットでネジを外す
ネジが浮いてきたら、指やピンセットで抜き取ります。

時計のバンドのネジを外している

ネジが回らない時は無理をしない

ネジには、緩み防止のために「接着剤」が塗布されていることがよくあります。

接着剤が強力で固い場合、無理に回そうとするとネジの頭を潰したり、ドライバーが折れて時計を傷つけたりするリスクがあります。

「固いな」と思ったら、無理に進めず作業を中止しましょう。

ヘアピン式バンドのコマ調整方法と注意点

ヘアピン式の見分け方

側面のピン穴を見ると、片方に「割れ目(縦の線)」があり、もう片方が「丸(U字)」に見えるのが特徴です。

また、バンドの裏側に矢印が刻印されていることが一般的です。

ヘアピン式の見分け方

ヘアピン式コマ調整の手順

矢印方向にピンを押し出す
ピン抜き工具を使い、バンド裏面の矢印が指す方向へピンを押し出します。

ピンを押し出している図

ピンセットなどで引き抜く
頭が出てきたら工具を使って引き抜きます。

外した向きと同じ向きで戻す
戻す際は、矢印の逆方向からピンを入れます。

外した方向から入れている図

向きを間違えると元に戻らない

ヘアピンは片方が割れて膨らんでいるため、向きを間違えると固定できません

必ず「抜いた方向」「ピンの形状(割れ目がある方)」を確認し、割れている側が最後に入るように戻してください。

最後はハンマーなどで叩いて、ピンの頭が出っ張らないよう「面一(ツライチ)」にします。

板バネ式バンドのコマ調整方法と注意点

板バネ式は初心者向きの構造

バンド裏面に矢印があり、板状のパーツが挟み込まれているタイプです。

1万5千円〜2万円前後の比較的安価な国産時計などに多く、構造がシンプルで丈夫なため、初心者でも調整しやすい方式と言えます。

使ってはいけない工具に注意

板バネを押し出す際、つい「ピンセット」を使いたくなりますが、絶対に使用しないでください。

ピンセットの先端は繊細なため、力を入れると折れたり曲がったりしてしまいます。

千枚通しや専用の押し出し工具など、先端が鋭く丈夫なものを使用し、テコの原理で板を浮かせます。

板バネ式コマ調整の手順

矢印方向に押し出す
工具を使い、バンド裏面の矢印が指す方向へピンを押し出します。

板バネ式で矢印方向に押し出している図

出てきた板バネを取り出す

取り出している図

板バネを元に戻して完成

板バネを元に戻している図

時計のコマ調整で失敗しやすいポイント

「できそう」で進めるのが一番危険

動画で見ると簡単そうに見えるかもしれませんが、実際には「力加減」や「指先の感覚」が非常に重要です。

特に、革ベルト交換などで使う「バネ棒」の操作は、工具の先端が見えない状態での作業になるため、難易度が高くなります。

「なんとなくできそう」という感覚で進めると、ケースに深い傷をつける原因になります。

セルフ調整が不安な場合の選択肢

・時計店や修理店に依頼する
・プロに相談する

検証の結果、格安工具でも作業は可能でしたが、大切な時計を守るためには「無理をしない」ことが鉄則です。

ご自身での作業に少しでも不安を感じたら、プロに任せることをおすすめします。

そしてもし、時計修理に少しでも興味がある場合、「オンラインで時計修理を学ぶ」という選択肢を検討してみてください。

Read in conjunction with

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この記事はオンラインウォッチアカデミーの講師である藤本が監修しています。

藤本信和

一級時計修理技能士。1973年東京都生まれ。
大学にて家具デザインを専攻、卒業後ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
ウォッチメーカーコースに通い、時計修理の世界へ。

時計店ではあらゆる修理・受付販売などに携わり、
その後東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジにて講師として10年間で、
学生とキャリアスクールの社会人約600人に教える。

21年4月より東京都千代田区飯田橋に自身の工房、Foliot(https://foliot.co.jp/)を構える。
好きな時計はROLEX。趣味はカーレース(軽自動車の耐久レース)